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事業報告

フィリピンと日本の貿易強化へ:FTA(自由貿易協定)の活用と持続可能な貿易の実践に向けた方策にかかるセミナーの開催 (2024.12.2 マニラ)

2024/12/25

FTAセミナー

写真左より:セネン・M・ペラダ副会長(フィリピン輸出連盟)、平林邦彦事務総長(日本アセアンセンター)、ジェニフェル・ラグマイ港湾サービス課長(フィリピン税関)、ビアンカ・パール・サイキムテ輸出マーケティング局長(フィリピン貿易産業省)(写真提供:フィリピン貿易産業省)

2024年12月2日、国際機関日本アセアンセンター(AJC)は、フィリピン貿易産業省(DTI)との共催で、「フィリピンと日本の間の自由貿易協定(FTA)の利益を最大化する:持続可能な貿易に向けて」と題したセミナーを開催しました。本セミナーは2024年のフィリピン全国輸出業者週間ネットワーキングイベントと貿易振興展の一環の、1日目の最初のイベントとしてパサイ市、メトロマニラにて行われました。 

主なポイント

•フィリピンの輸出ポテンシャル【フィリピン貿易産業省DTI】: フィリピンは、持続可能な製造業の革新ハブとしての地位を確立することが可能である。特に、エレクトロニクスおよび半導体分野での強い実績を活かし、貿易協定や規則の見直しを通じて、日本との供給連携を強化することが重要である。 

•フィリピン-日本間の貿易状況 【フィリピン税関BOC】: 2022年、フィリピンへの日本の輸出額は114億ドルであり、フィリピンから日本への輸出額は113億ドルで、主な輸出品は絶縁ワイヤー、ニッケルマット、集積回路製品。フィリピンからの日本向け輸出のトップは、エレクトロニクスと半導体(輸出総額の50%以上)、バナナ、パイナップル、マンゴー、ツナなどの海産物、ニッケル等金属、自動車部品と機械類などであり、さらなる輸出品の多角化が期待される。 

•フィリピン-日本間のFTA状況 【日本アセアンセンターAJC】: フィリピンから日本へのFTA利用率は低い状況にある(JPEPA 23.39%、AJCEP 1.18%、RCEP 0.82%)。フィリピン企業には、既存のFTAを活用し、利点を最大化することが強く奨励されると共に、中小企業においてはニッチ市場の開拓(一例:ヘルスケア、エイジング等)が有望なため、AJCは市場情報の提供等で今後、支援を進めていく。 

•RCEPの利点 【日本経済産業省METI】: 1つのRCEP加盟国からの原材料が他の加盟国で加工された場合、加盟国内製品として認められる。この規定は、部品や原材料を他国から調達するエレクトロニクスや半導体産業、縫製業にとって有益となるものであり、更なる活用が期待される。 

•FTAを最大限に活用するための3つの重要な要素 【フィリピン税関BOC】: 原産地証明書、原産地規則の遵守、効率的な通関手続きの3点。フィリピン中小企業は、日本の関税検索ツールを活用し、DTIやBOCの支援協力を積極的に受けてほしい。 

•市場機会の検討 【AJC・株式会社ココウェル】: フィリピンの中小企業は、日本の成長分野である健康・ウェルネス市場やサービス業を視野に入れるべきである。「消費者動向調査」によると、健康意識の高い消費者の割合は2008年12月の28.7%から2024年7月に43.2%に増加。また、「有機食品」の市場規模は2022年に153,142百万円(約399億比ペソ)で、2024年から2032年にかけて11.2%の成長が予測されている。 

•日本市場へのアクセス【AJC】: 輸入割当、製品表示、安全基準に加え、日本の代理店や配送業者との関係構築が輸出を希望する比中小企業にとって重要。ネットワーク形成には国内外問わず貿易展示会や業界イベントへの参加、ビジネスネット団体への加入、SNSなどのソーシャルメディアの積極的な活用が含まれる。 

•比ココナッツ輸入販売企業ココウェルの取り組み【株式会社ココウェル】: フィリピン産ココナツ製品(オイル・石鹸・アイス等加工食品)の日本での販売にあたり、輸出、輸入、加工、販売を通じたビジネスの紹介。フェアトレードプレミアム「ココ基金」を通じた社会貢献の説明。2013年の台風ヨランダ、2017年のレイテ地震、2020年のタール火山噴火、2021年の台風オデットなどの災害救援、貧困削減、フィリピンの恵まれない子供たちへの奨学金支援を含む、社会的貢献への持続的な取り組みを積極的に行っている。 

プログラムについて

本イベントは、企業のFTAの活用を活性化することを目的に、「Usapang Export(フィリピン語で貿易について語ろうの意味)」と題し開催されました。午前のセッションでは、フィリピン貿易産業省のセフェリノ・S・ロドリゴ次官による歓迎の挨拶から始まり、日本がフィリピンにとって重要な貿易相手国および投資国であることが強調されました。次に、日本アセアンセンター平林国彦事務総長より、日本のウェルネスマーケットの可能性について説明し、フィリピンの中小企業にこの成長市場を探るよう促しました。

続いて、アラン・B・ゲプティ貿易産業次官(国際貿易担当)が講演し、フィリピンと日本の貿易関係を強化するためには、エレクトロニクス分野でのさらなるバリューチェーン開発が必要であることを強調しました。

その後、日本の経済産業省経済連携課の牧野太郎課長補佐が、地域包括的経済連携(RCEP)協定を活用して日比間の貿易を強化する利点について説明しました。

また、フィリピン税関のジェニフェル・ラグマイ課長より、2022年にフィリピンから日本への主な輸出品であるエレクトロニクスや半導体(絶縁ワイヤーや集積回路など)についての洞察が行われました。

午前の部は、参加者が基調講演者に直接質問を行うオープンQ&Aを行い終了しました。

日本アセアンセンター の平林国彦事務総長は、フィリピンの中小企業にとって日本の健康・ウェルネス分野は、重要な市場機会と捉えることができることを強調しました。(写真提供:DTI)

午後の部では、さらに具体的な洞察と説明が行われました。日本アセアンセンターの石田靖事業統括部長代理は、フィリピン-日本間のFTAを活用状況、日本での潜在市場の探求、そして日本の外国輸出規制の理解について包括的なプレゼンテーションを行いました。

また、株式会社ココウェルの永井裕代表取締役社長より、同社がどのようにして中小企業として比ココナツ製品の輸出販売で成功例となったかを参加者と共有しました。午後の部では、登壇者によるパネルディスカッションを行いました。このパネルでは、FTAのベストプラクティス、戦略、課題について重要な質問が取り上げられ、プロモーションツールやプログラムの活用可能性が強調されました。さらに、日本市場への浸透における持続可能性の役割についても言及されました。

写真左より:セネン・M・ペルラダ副会長(PHILEXPORT)、石田靖事業統括部長代理(日本アセアンセンター )、水井裕CEO(Cocowell)、ビアンカ・パール・R・サイキムテ輸出マーケティング局長(DTI)が、フィリピンの中小企業経営者からの日本でのビジネスに関する重要な質問に対する質疑応答が行われました。(写真提供:DTI) 

午後の部は、サイキムテ輸出マーケティング局長の感謝の言葉で締めくくられ、参加者への感謝を表し、持続可能で包括的な実践を通じてフィリピン-日本間の貿易関係をさらに強化するためにFTAの利点を最大限に活用する重要性が再確認されました。 

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