経済産業省および日ASEANの関係機関が共催する日ASEANビジネスウィーク2023が、6月5日(月)より9日(金)までの5日間、開催されました。
「イノベーション」と「サステナビリティ」をキーワードに、ASEAN諸国のビジネスの現状と可能性を考察する機会として、日ASEANの企業や有識者等が登壇する式典や関連ウェビナー/セミナーが連日実施され、経済産業省による「日ASEAN経済共創ビジョン」の中間とりまとめの公表やASEANビジネスの最新状況、先導的な取り組み事例の紹介など、各方面の識者による幅広い議論が行われました。
日本アセアンセンター(通称:AJC)は、同ビジネスウィークの二日目となる6月6日(火)13:00 -14:30に「包摂的で持続的な経済開発のためのソーシャルイノベーション」というテーマで、社会的企業、インパクト投資(財務的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的および環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資行動 )、ソーシャルイノベーション(社会問題に対する革新的な解決法 )の役割について議論を行いました。
これは、AJCが掲げる中期戦略計画「AJC 5.0」のうちの目標2. 「持続可能なインパクト投資」のうち、プログラム2.1: 「日本からASEANへの持続可能な責任あるインパクト投資の促進」に沿うものです。
ソーシャルイノベーション、”and”という言葉の力、メイド・ウィズ・ジャパン:
シブサワ・アンド・カンパニー創業CEO渋澤健一氏による基調講演では、150年前の明治時代の銀行、製紙会社、繊維産業、女子教育など、日本で起こったソーシャルイノベーションが紹介されました。
また、人と人との相互作用や、様々な地域やアクターを「and」でつなぐことにより創造されるイノベーション、「and」という言葉の力が新たな事業の創作をもたらし、包摂的で持続可能であることには必要不可欠であることが説かれました。
さらに、成長と分配の好循環を目指す、新しい資本主義や日本の将来はメイド・ウィズ・ジャパン(日本と共創する)で日本が世界とつながり続けることの重要性が話されました。
Fintech Journal 2023 https://www.sbbit.jp/article/fj/106129
Stanford Graduate School of Business https://www.gsb.stanford.edu/experience/about/centers-institutes/csi/defining-social-innovation
ソーシャルイノベーションの活用とインパクト投資の実現、実践に向けて:
ASEANと日本の社会起業家や社会投資家が参加したパネルディスカッションでは、インパクト投資を促進するためにソーシャルイノベーションをどのように活用できるのかについて議論が行われました。
まず、社会的企業を経営するパネリスト(GRINGGO共同創設者 フェブリアディ・プラタマ氏や、Edukasyon.ph 代表取締役 グレース・デービッド氏)からは、社会的企業の活動が投資家によって慈善活動と見做されてしまい、収益性のあるビジネスとして見てもらえないもどかしさが共有されました。これに関して、社会的企業のビジネスを、他のビジネスと遜色の無いものとして、投資家に対してアピールすることが重要だということが議論されました。
社会的企業に出資するベンチャーキャピタル企業を経営するパネリスト(ChangeFusion Group創設者スニト・シェレスタ氏や、リアルテックホールディングス株式会社 藤井昭剛ヴィルヘルム氏)からは、「現況、インパクト投資の市場規模や参入している企業は少ないものの、近い将来、インパクト投資が一般的になる」という展望が語られました。
またソーシャルイノベーションの活用において日本とASEANの共創分野は多く存在し、解決策を持ち寄り、お互いに足りない部分を補うことができること、持続可能性の重要性は認識の段階から実践に移っており、ソーシャルイノベーションは、新しい製品やマーケットを作り出し、効率よく資源を活用することに繋がっており、ソーシャルイノベーションを実践することの大切さを再確認しました。
ソーシャルイノベーションの推進、多様なアクターの結節点として:
グローバル化した世界においては近い将来、ビジネス活動が気候変動、防災、廃棄物処理、感染症、農業の高度化、教育格差など国境を越えた社会的な課題解決に貢献することが新しい常識となり、より多くの企業がソーシャルイノベーションのエコシステムに参入することが予想されます。AJCは起業家、投資家、政府・民間企業など多様なアクターの結節点(ハブ)として、ソーシャルイノベーションを推進していきます。
イベントについて
日 時:2023年6月6日(火) 13:00-14:30
共 催:国際機関日本アセアンセンター、経済産業省、日本商工会議所、日本経済団体連合会、
日本貿易振興機構(JETRO)、経済産業研究所(RIETI)、国際協力機構(JICA)、ASEAN事務局、
ASEANビジネス諮問評議会(ASEAN-BAC)、ASEAN・日本経済協議会日本委員会(AJBC)、
東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)、日アセアン経済産業協力委員会(AMEICC)事務局